ALL I NEED

 あらすじ

幼稚舎から高等部までがすべて敷地内にある、私立桃桜女子学園。 逢沢雛子は、幼少時から今日までこの学園から一歩も出ずに過ごしてきた。

高等部に進学し、寮で上級生の茅ヶ崎聖愛(せいら)と相部屋となった雛子は、「儀式」と称して肉体関係を求められる。 しかし、あまりに無邪気で性に無知な雛子は、上手く達することができなかった。

聖愛に「イケない子」と言われてしまった雛子は、友人達を巻き込んで性に関する勉強をすることになるのだが・・・。

 みどころ

「あきそら」に代表される過激な性描写で知られる、糸杉柾宏さんの作品。 「あきそら」にも主人公の妹に関連して百合要素がありましたが、この「ALL I NEED」は女子校を舞台にし、本格的に百合をメインテーマにしています。

チャッチコピーは「乙女たちの内なる宇宙をめぐる冒険」。 具体的にはぶっちゃけ女の子の「性」のことだと思われ、毎回雛子と女友達が「勉強」と称してエッチな事をしてしまうのが基本的なパターンです。

このように一見明るくおバカな百合ラブコメなのですが、たびたび語られる「鳥籠の扉を開ける」という言葉の真意など、根底にはシリアスな要素が見え隠れします。

 百合ポイント

まず第1話でいきなり雛子と聖愛のエッチシーン。 第2話以降は、自らの性の知識のなさを嘆く雛子が友人達にいろいろ教えてもらうという展開になっています。

雛子と3人の友人(カリン、ノドカ、ルリ)は潜在的にお互いのことが好きだったようで、 性の勉強をしているうちに変な雰囲気になってしまい、そのまま事実上のエッチに突入してしまうのがお約束のパターン。

第1巻の最後のエピソードでは、総仕上げとばかりにカリン・ノドカ・ルリが3人で協力して雛子を「イカせる」シーンが描かれます。 ぶっちゃけ単なる4Pにしか見えないのですが、3人それぞれの雛子への「好き」の気持ちが存分に描かれているので、百合漫画としても非常に盛り上がる場面です。

 売れなかったからです

こうして、友人達の助けによって無事に性に目覚めた雛子。 単行本第1巻のお話はここまでで、雛子の「そして夏がやってくる。忘れられないあの夏が──」というモノローグで締められています。 次巻予告カットで描かれているカリンとのエッチに夢中の雛子や、新キャラの謎の美少女もあって、この先のストーリーが非常に気になる終わり方です。


しかし、1巻発売の少し後にこの漫画打ち切られてしまいました。理由は、「売れなかったから」。作者の糸杉柾宏さんのツィッターで終了に至った経緯が語られているので、以下に一部を抜粋させていただきます。

「『ALL I NEED』は次回で休載させていただきます。」

「理由は、『売れなかったから』です。」

「漫画の興行は1巻でほぼ決まります。それはミラクルが起きない限り、自明の理です。『売れないものを描き続けること』と『もしかしたら売れるかもしれない次の漫画を描くこと』を天秤にかけたとき、私は後者を選びました。」

「百合は、難しかったですね」

参照:「ALL I NEED」終了に関する糸杉柾宏さんのツィートまとめ

 その後の展開

このように「ALL I NEED」は打ち切りになっており、単行本の第2巻が出ることはおそらくありません。

第1巻に収録されたのは第6話までなのですが、実は雑誌連載版では第10話まで存在しています。 そこで以下では、単行本未収録の第7〜10話のあらすじを簡単に紹介します。

ただし百合的には知らないほうが幸せかもしれない要素が多数含まれますのであしからず。 見たくない人は戻ったほうが良いかもしれません。→【トップページに戻る】

第7話「交換学習」

性に目覚めた雛子は、カリン達とのエッチにすっかりハマっていました。 カリン達は雛子の成長(?)を喜びつつも、間違った道に進ませてしまったのではないかとちょっと心配。

そして学園では、姉妹校である男子校「剛田学園」との交流行事「交換学習」が始まります。

第8話「リオ」

時間をちょっと遡り、舞台は上述の男子校「剛田学園」。

女の子のような可愛らしい顔の少年・相馬リオが周囲から女装を求められ、戸惑いながらも次第に染まっていく姿が描かれます。 コミック第1巻の次号予告で登場した謎の美少女の正体はコイツです。


この回は女装ものの倒錯話としては非常によくできており、作者さんもツィッターで以下のように自画自賛しているほどです。

『正直ね、リオ編は、好きなんですよ。趣味も入ってるし。漫画としても良く出来ている。いやマジで。漫画として教科書にしていいくらいよく出来ている。でも、遅かったorz』

しかしこれまでずっと百合展開だったところに急にこれなので、百合的には地雷という他ないですね・・・。

第9話「見学」

またしてもリオ視点。 「交換学習」で桃桜女子学園に女装したままやって来たリオは、雛子に女の子と間違われ、そのまま仲良くなります。 リオは雛子を「初恋の人」に似ていると感じたようですが、はっきりとしたことはわかりません。

そして雛子に寮の部屋まで連れ込まれたリオは、なぜか雛子とカリンのエッチを「見学」することになります。 しかしあまりに過激な光景に、リオは逃げ帰ってしまうのでした。

第10話「女王の蜜」

最終話。話がやっと雛子視点に戻り、作品初期を思わせる純粋な百合系エピソードです。

ある夜、聖愛が他の女の子とエッチしているのを目撃してしまった雛子は、「嫉妬」という感情を知ることになります。 そして雛子は聖愛を自分だけの物にするべく、久しぶり(第1話以来?)に聖愛とエッチするのですが、聖愛を満足させることはできませんでした。 結局、聖愛はその夜は他の女の子のもとに行ってしまいます。

最後の台詞は、雛子の「初めて…悔しくて涙がこぼれた」という独白です。 作者さんによればこのような結末で終わらせる意図はなく、たまたま途中のこのタイミングで打ち切られただけらしいのですが、結果的にあまり後味のよくない最終回となりました。 ページ欄外の「糸杉先生の次回作にご期待ください!」という決まり文句が涙を誘います。


打ち切りのためこの先のストーリーはわからないものの、第8・9話での扱いからして、リオが大きく絡んでくるのは間違いなかったのではないかと思います。 雛子の過去、そして作品初期から言われていた「鳥籠の扉を開ける」というテーマを絡めて、かなりハードな展開が待っていた可能性があります。 見てみたかったような、もう見たくないような・・・。

いずれにせよ、個人的には打ち切りにするには惜しい怪作だったと思っています。


最終更新:2014/08/25

inserted by FC2 system