荊の城

 あらすじ

舞台は19世紀半ば、ヴィクトリア朝時代のイギリス。

ロンドンに住む孤児の少女・スウは、
顔見知りの詐欺師(通称"紳士")から、ある儲け話を持ちかけられる。

それは、"紳士"が仕掛ける結婚詐欺の手助けをしてほしいというものだった。
狙いは、とある田舎町の古城に住む少女・モード。
彼女は莫大な財産の相続人になっていた。
そんなモードをたぶらかして結婚し、
財産をごっそりいただいてから捨ててしまおうというのが"紳士"の計画だ。

スウが依頼された仕事は、
侍女としてモードの下にもぐりこみ、影から"紳士"の手助けをすること。
成功の暁にはスウも結構な分け前をもらえることになっている。

そしてスウは"紳士"の計画に乗り、
モードの住む古城で侍女として働くことになる。
年齢が近いこともあり、すぐにモードとうちとけ、
信頼関係を築いていくスウだったが…。

 みどころ

騙す側・騙される側の思惑が激しく交錯し、
二転三転する物語がスリリングなミステリー小説。

物語は3つのパートに分かれており、
第1部と3部はスウ視点、第2部はモード視点になっています。
同じ出来事を違う別々の視点から見ることになる部分もあるため、
2人の主人公の対比が上手く描かれています。

 百合ポイント

基本はミステリー小説だけに
ラブストーリーがメインというわけではありませんが、
スウとモードの愛憎劇が物語の重要な位置を占めています。

最初のみどころは、第1部の後半部分。
侍女として城にもぐりこんだスウですが、
騙す相手のはずのモードに少しずつ惹かれていき、百合っぽい雰囲気を漂わせます。
特に凄いのは初夜の練習と称してモードと××××してしまう場面です。

さらに読み応えがあるのが第2部前半部分で、
スウとモードが惹かれあう一連の過程がモードの視点から描かれています。
自分の中の恋心にやや無自覚だったスウと違い、
モードはスウに明確に恋愛感情を持っていることが読み取れるため、
百合度は第1部よりさらに高いです。
例の初夜の練習の場面もモード視点からじっくりと描かれています。

ただ、その後の第2部後半〜第3部中盤まではミステリー色が濃くなり、
百合色はやや薄くなってしまいます。
また、ストーリーが急展開する中でスウはモードを憎むようになってしまいます。
しかしモードのほうは一貫してスウを愛しているので、
希望を捨てずに最後まで読むことをおすすめします。

最終的には、"紳士"をはじめとする百合的に邪魔そうなキャラ達は
上手い具合にストーリーから消えてくれますし、
終わってみればスウもモードも1度も男に汚されずに済んでいます。
最後はちょっと出来すぎじゃないかと思うくらいの
素晴らしい百合エンドになっているので必見です。

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