2007年6月に創刊された百合姫の姉妹誌。
当時すでに(主に百合漫画で)実績のあった人気漫画家を多数迎え、
百合好きな人にはもちろん、
そうでない人たちの間でも知名度のある作家さんが揃っています。
また、掲載作品の作風はライトで読みやすい感じで統一されており、
絵柄も可愛らしい物が多ため、いわゆる萌え系の需要にも対応しうる内容でした。
「ゆるゆり」はまさにその代表例で、
後にアニメ化されるなど大ヒット作品となりました。
百合姫本誌と併行して季刊での発行が続いていましたが、
2010年9月発売のVol.14をもって最終号を迎え、
3年と3ヶ月の歴史に幕を下ろすことになりました。
ここでは、Vol.1の掲載作品を見ながら、
百合姫Sが目指した作風やコンセプトを振り返ってみたいと思います。
マイナスりてらしー |
ストーリー
没落した資産家の跡取り娘・康光(やすみ)は、
唯一残された財産である屋敷にメイドの美晴(みはる)と2人暮らし。
ある日、給食費徴収のために屋敷を訪れた学級委員の友加(ともか)は、
康光が不幸を呼ぶ「マイナス金運」に取り付かれているという話を聞く。
百合的には、康光と美晴の絆がメインになっていて、
友加は思ったほどストーリー上重要でなかったりします。
なお当初は連載物だという発表はなく、最後も普通に「おわり」と締めていましたが、
Vol.2以降にも続きが描かれて連載化。
のちに単行本になりましたが、なぜか普通の百合姫コミックスより小さく
値段が安いという謎の扱いを受けていました。
創刊号の巻頭カラーだったこともあり、
個人的には百合姫Sといえば真っ先に浮かぶ作品のひとつです。
作者
宮下未紀
代表作:「よくわかる現代魔法」「ピクシーゲイル」
HONEY CRUSH |
ストーリー
隣町の高校に通う"まどか"に片想いしていた少女"みつ"は、
交通事故に遭い、この世に未練を残したまま死んでしまった。
しかし、みつはその後も幽霊として現世にとどまっており、、
見えないことをいいことに、まどかにストーキング三昧でご満悦の日々。
しかしそんなある日、まどかの幼馴染だという少女・恭子が登場し、
まどかに愛の告白をしてしまう。
さらに、恭子はなぜか幽霊であるみつの存在を見抜いてしまい、
みつと恭子はまどか争奪戦へ突入する。
こちらも連載もの。
創刊号から作品終了までずっと百合姫Sの表紙を務めていた作品です。
当時は「これが私の御主人様」が人気の頃だったので、
文字通り百合姫Sの看板となることが期待されていたのだと思います。
ストーリー的には、三角関係もの・・・と思いきや
だんだんまどかの影が薄くなって
みつと恭子の関係がメインになっていきます。
作者
椿あす
代表作:「これが私の御主人様」 「メイドをねらえ!」(いずれも作画のみ)
フォーチュン・リング |
ストーリー
恋をかなえるおまじないの腕輪「フォーチュン・リング」。
水泳部に所属する少女・マキは、
憧れの比良坂先輩が腕にフォーチュン・リングをしているのを目撃する。
先輩に誰か好きな人がいると思い、落ち込むマキだったが・・・。
残念ながら作者の柏原麻実さんはVol.2以降には登場しませんでした。
でものちに百合姫本誌のほうに登場しています。
作者
柏原麻実
代表作:「宙のまにまに」
ちなみにカシマミというペンネームで「百合天国」に参加していたことがあります。
ポエムに恋して |
ストーリー
自分の気持ちをついポエムで表現してしまう少女・まゆ。
まゆはある時、年上の先輩・あげはに一目惚れし、猛烈にアタックを開始する。
あげははまゆのちょっと変な性格に戸惑いつつも、
次第にまゆを憎からず思うようになる。
あらきかなおさんはVol.2以降にも登場しましたが、
残念ながらやがてレギュラー連載陣からは外れます。
作者
あらきかなお
代表作:「夢みたいな星みたいな」 「魔法のじゅもん」
あと特に百合じゃありませんが、
「乙女はお姉さまに恋してる」のコミからイズなんかもやってますね。
SUIKA |
ストーリー
スイカが大好きな"さっちゃん"は、
スイカを一人でまるごと一つ食べたら願いがかなうという自分ルールを作っている。
近いうちに転校することが決まっているさっちゃんの親友"りんちゃん"は、
最後の思い出に、「さっちゃんと恋人になる」という願いをかけて
スイカを食べ始める。
どこか懐かしい夏の田舎町という、
作者の吉富昭仁さんが好んでよく使う舞台設定がなされています。
Vol.2以降でも同様の作風でオムニバス的に連載され、
のちに「熱帯少女」として単行本化されました。
作者
吉富昭仁
代表作:「BLUE DROP」 「熱帯少女」「しまいずむ」
南波と海鈴 |
ストーリー
ある日、不思議な占い屋を見つけた海鈴は、
南波と仲良くなるためのアドバイスを聞く。
これが実によく当たったため、海鈴と南波はどんどん仲良しになっていく。
一方、同じく南波と仲良くなりたい二波も、この占い屋を発見し・・・。
百合姫本誌からの出張。いつも通りのノリです。
のちに最終回を本誌ではなく百合姫Sで迎えることになりました。
作者
南方純
「南波と海鈴」
interface |
ストーリー
かつて自分に綺麗なペンダントをくれた不思議な人を捜す、小学生の女の子。
何か知っていそうな北本先生につきまとってみるが・・・。
「少女セクト」の玄鉄絢さんということで、
個人的にはかなり期待していたのを覚えています。
まあ、百合姫Sでは正直微妙な作品が続くのですが・・・。
最後のページの編集者コメントに「年の差を越えて芽生えかけた恋」とありますが、
小学生と先生というのは年の差というレベルじゃないような・・・。
玄鉄さんはのちに「つぼみ」でも年の差ものを描いていますね。
作者
玄鉄絢
代表作:「少女セクト」 「星川銀座四丁目」
乙女色 Stay Tune |
ストーリー
人気声優の日南子(ひなこ)は、
ラジオで共演している後輩の有世(ありせ)から、
積極的にアプローチをかけられる。
日南子は照れ隠しに冗談扱いしてしまうが・・・。
女性声優さん達によるちょっと百合っぽい関係を描いた作品。
ラジオでたまに声優さんがしている百合っぽいトークにヒントを得たものと思われます。
連載ものだったはずですが、休載だったり極端にページが少なかったりすることが多く、
やがていつの間にか消えていました。
・・・が、「飴色紅茶館歓談」第2巻にてまさかの収録。
1ページだけですが後日談が追加され、一応の完結?
作者
藤枝雅
代表作:
「ことのはの巫女とことだまの魔女と」 「いおの様ファナティクス」
「飴色紅茶館歓談」「ティンクルセイバー」
オトメキカン グレーテル |
ストーリー
聖ミルフィーユ学園に転入してきた少女・ユウは、
女の子が大好き。
転入早々に綺麗な先輩とも出会えて、女子校生活を満喫しようとしていた。
しかしそんな時、学園に怪物「フォルミーカ」が襲来する。
フォルミーカは、
砂糖類をはじめあらゆる甘味を奪い去る乙女の敵ともいえる存在だった。
連載ものです。
初期の掲載作品の中でも1回ごとのページ数が特に多く、
初期の百合姫Sを支えていたのはこの作品と言っても過言ではありません
(ページ数的な意味で)。
しかし次第にページ数が減少するなど連載ペースが落ちていき、
やがて長期休載となり未完のままとなっています。
作者
すどおかおる
成人漫画をメインに活動している方のようです。
「お姉ちゃんのくちびる」「彼女のカノジョ」等は百合な内容。
アップル・デイ・ドリーム |
ストーリー
洋服ブランド店、アップル・デイ・ドリームは
夏に向けて企画会議の真最中。
しかし薫は相変わらず由真の乳にしか興味がない。
百合姫本誌からの出張です。
作者
城之内寧々
百合姫への投稿でデビューした方だそうです。
百合姫本誌で「アップル・デイ・ドリーム」を連載していたほか、
「百合姫Wildrose 」にも参加しています。
愛しのメイド様 |
ストーリー
舞台は学園の文化祭。
エリの憧れの先輩・
京香はクラスの出し物でメイド喫茶をやっている。
エリはみんなからチヤホヤされる京香を見て、
モヤモヤした気持ちをつのらせる。
のちに単行本「夜空の王子と朝焼けの姫 」に収録。
作者
袴田めら
flower*flower |
ストーリー
とある国の姫・朱は兄の婚約者だったはずのニナ姫に見初められ、
結婚を申し込まれてしまう。
しかしその後、ニナは一転して朱に冷たい態度をとるようになる。
さらには、どうやらニナは朱を男だと思い込んでいるらしく・・・。
連載ものです。
朱は第2回になっても自分が女だと言い出せないままでした。
その後もしばらくずーっと男だと思われたままです。
百合姫Sの創刊号から最終号まで連載が続いていた数少ない作品。
作者
石見翔子
約束の指 |
ストーリー
翠々香(すずか)は、名家の娘ではあるが、
厳しい父親に自由を縛られる生活を送っている。
そんな翠々香にとっては、使用人のことねだけが心の支えであり、
2人は強い絆で結ばれていた。
しかし、父親が勝手に男との結婚話を持ってきたことにより、
翠々香とことねは離れざるをえなくなってしまう。
ライトな作風が多い百合姫Sの中で、オチがいろんな意味で重いです。
作者
柚葉せいろ
百合姫発の期待の新人…らしいです。
百合姫Vol.8に「森の館に棲む花たち」という作品を描いています。
今回もそうですが、どこか残酷な悲恋ものが得意なのでしょうか。
カシオペア・ドルチェ |
ストーリー
「ドール・マイスター」見習のアンナは、師匠のエルザ先生が大好き。
しかし、エルザは共同経営者のオルガという女性とラブラブなため、
アンナはヤキモチを焼く毎日だ。
今回はプレビュー版。
第2回から本格的に連載を開始しましたが、
ディープキスの嵐ですごいことになっていました。
毎回とにかくキスの多い作品。
「flower*flower」とともに、創刊号から最終号まで続いた稀有な作品。
その後、単行本の描きおろしにより完結したようです。
作者
高木信孝