ひとひら

 あらすじ

麻井麦(あさい むぎ)は、内気で極度のあがり症な女の子。
人前に出るとすぐに緊張してまともに喋れなくなってしまうほどだ。

そんな麦だったが、高校入学初日に突然演劇研究会からの誘いを受ける。
3年生の一ノ瀬野乃(いちのせ のの)が、
麦が内に秘めている声の良さを見込んでスカウトしに来たのだ。

あがり症の麦にとって演劇なんてとんでもない話だったが、
野乃の強引な勧誘に流されるまま、麦は入部を承諾してしまう。

それからの麦は悪戦苦闘の日々。
もともとの内気な性格もあって、演技もなかなか上達しない。
しかしそんな麦もやがて皆とうちとけ、演劇の楽しさを知っていくのだった。

そして演劇にもだいぶ慣れてきた頃、
麦はなんと文化祭公演の主役に抜擢される。
演目は野乃が脚本を執筆した「ひとひら」だった。

 みどころ

高校生たちが一つの目標に向けて頑張る青春ストーリー。
舞台の高校は一応共学のようですがメインキャラのほとんどは女の子です。
女の子どうしの恋愛と言うほどの直接的な描写はありませんが、
強い友情や仲間としての絆を描いたエピソードが多く、
百合っぽく見える場面がたくさん出てきます。

中でも注目したいのが、
麦の先輩である野乃と美麗(みれい)の2人です。
この2人は以前は親友だったのですが、過去のある出来事をきっかけに
ストーリー開始時点ではちょっとした対立関係になっています。
しかし、表面上は犬猿の仲でも、
心の奥では今でもお互いのことを親友だと思っていて、
ところどころでお互いを気遣っていることが感じられます。

特に印象深いのは、
2人っきりで倉庫に閉じ込められるシーンです。
この時だけは2人とも素直になり、お互いの本当の気持ちを打ち明けあっています。
特にアニメ版ではこのシーンが非常に百合な雰囲気で描かれており、
今にもキスしそうな勢いでした。

他には、麦とその親友の佳代のエピソードも百合っぽいです。
佳代は出番こそそれほど多くありませんが、
麦の一番の親友として、いつも麦を支えてくれています。
あるきっかけで一時期気まずい関係になってしまうのですが、
後に仲直りするシーンでは泣きながら抱き合って友情を確かめあっています。
2年生編以降出なくなるのが残念ですが・・・。

 ストーリー紹介等
コミックのストーリーを紹介しています。
ネタバレ注意。
登場キャラクターを簡単に紹介しています。
 TVアニメ版

2007年春からTVアニメ版が放映されました。
全12話で、麦の高校入学から野乃達の卒業までの約1年間を描いています。

基本的なストーリーは原作とほぼ同じですが、
ところどころにアレンジが加えられています。
全体的な百合度は原作よりアップしており、
女の子達の友情がより力強く描かれている他、
抱き合ったり見つめあったりする描写がかなり増え、
百合な雰囲気を漂わせています。

特に野乃と美麗関連は力が入っており、
一貫した物語の軸として非常に強調されています。
野乃と美麗の友情が、麦の成長と並ぶ作品のテーマとして
前面に押し出されている感じです。 特に第7話や最終回は必見の出来です。

ただ、時々出てくるなんだかズレた演出(背景が宇宙になるとか)や、
原作の描写からするとやや違和感のある主人公の声など、
百合以外の部分では少し残念に感じたところもあります。

以下、各話の百合的なみどころを
簡単なあらすじとともに紹介します。

 2年生編

コミック4巻の中盤からは麦が2年生になり、
作風的にも大きな転換期になっています。
1年生編は一言で言うと演劇百合漫画といった印象でしたが、
2年生は百合要素はかなり薄くなっています。

まず、1年生編では主人公そっちのけで百合ワールドを展開していた野乃と美麗が
ほとんど出てこなくなっています。
この2人は元々3年生なので卒業してしまったのは仕方ないのですが、
麦の同級生である佳代も留学したという理由により出番がなくなってしまいます。
これによって、この作品で百合要素を担当していたキャラがほぼ全滅。

その一方で、男性の新キャラ(しかも麦に好意を持っている)が入ったり、
それに対抗するように既存の男性キャラである甲斐も麦に接近したりして、
普通の男女の恋愛の描写にやや力が入るようになっています。
さらに後半になるにつれ、ちとせが甲斐のことを好きという描写が入るようになり、
麦・甲斐・ちとせの三角関係のような状態になっています。
特に甲斐はストーリー終盤で麦に告白し、麦がこれを受け入れるので、
百合目的で最後まで読むのはかなりつらいと言わなければなりません。

もともと百合を大々的に謳った作品というわけではないのでそこは我慢するとしても、
百合以外の点でも1年生編と比べるとやや失速しているような印象を受けます。
例えば1年生編ではライバル的存在だった演劇部(美麗の後輩達)が
メインキャラに昇格されていますが、
もともと美麗以外は背景キャラ同然の扱いだっただけにいまひとつ個性に乏しく、
野乃たちほどの魅力を感じることができません。
また、主人公の麦も、1年生編でいろいろなことがあって成長したはずなのに
また一人でくよくよ悩むような描写が増えており、ループしているような印象を受けます。

とはいえ、最終回では立派に成長した麦が見れるので、
一度この作品を気に入った人なら最後まで読んでみてほしいです。

ひとひら 7 (アクションコミックス)

 ひとひらアンコール

本編終了後、「ひとひら」のサブキャラ達にスポットを当てた番外編、
「ひとひらアンコール」が発表されました。

ちとせやさちえ等の本編でもある活躍したキャラだけでなく、
ミケ先輩や生徒会長など本編でほとんど目立たなかったキャラを
主人公としたエピソードもあり、「ひとひら」の新たな側面を知ることができます。

また、本編後半で出番のほとんどなかった佳代に関しては
留学を決意したいきさつや、留学先での頑張りが描かれています。
さらに野乃と美麗が喧嘩の真っ最中だった頃の出来事が
他キャラの視点で描かれているなど、
本編の補完的な面でも楽しめる作品となっています。

ひとひらアンコール (アクションコミックス)


最終更新:2010/4/14
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