BLUE DROP 〜天使の僕ら〜

 あらすじ

舞台は、アルメと呼ばれる異星人に支配されている未来の地球。

普通の生活を送ってた地球人の少年・翔太の前に、一人の美少女が現れた。
初対面のはずなのにいきなり「セックスしてください」とせがんでくるその少女に
動揺する翔太だったが、ふとしたきっかで彼女の正体に気付いてしまう。
その少女は、行方不明になっていた翔太の親友・建造だったのだ。

建造は、アルメによってある実験の被験者にされていたのだった。
それは、地球人の男を女に改造し、さらに男と性交させて子供を作る実験だ。
実験の秘密を知った翔太はアルメ達によって消されそうになってしまうが、
1週間以内に建造とセックスして子供を作ることを条件に、見逃してもらうことになる。
そして翔太は少女化した建造としばらく一緒に暮らすことになるのだが・・・。

 みどころ

吉富昭仁さんの「BLUE DROP」シリーズの一作です。
作中時系列的としては、TVアニメ版の10年後で、
かつメディアワークス版コミックの1000年前という位置付けになっています。
メディアワークス版が一話完結式の短編集だったのとは違い、
こちらは連載形式の長編(といっても全2巻で完結ですが)になっています。

メディアワークス版が巨大な残留兵器の暴走や政府とレジスタンスの戦いなど、
スケールの大きいSFチックなストーリーを描いていたのに対し、
この「天使の僕ら」は、アルメに関するとある事件に巻き込まれてしまった
一組の男女(片方は元は男ですが)の絆を中心に描いた物語です。

全体的に倒錯的な描写が非常に多く、
同性愛(ホモ、レズの両方含む)、性転換、女装などが頻繁に登場します。
いろんな意味で過激なので耐性の無い方は注意が必要です。

 百合ポイント

半分BLもののような本筋のストーリーやその他の過激なネタの影に隠れがちですが、
普通の百合描写も結構出てきます。

アルメ

まず、地球を支配する異星人「アルメ」は女性だけで構成される種族で、
恋愛も繁殖も女だけでできるという設定です。
そのため、アルメ達が女どうしで恋愛(場合によってはセックスまで)している場面が
作中のあちこちに描かれています。

町の一角には「アルメ通り」と呼ばれる妖しげな歓楽街があり、
そこのお店の中では女性だけの乱交パーティーが行われています。
また、女子高に地球人の可愛い女の子達を集めて
百合嗜好の女の子を育てる「養殖場」にしていたり、
とにかく女の子大好きな百合星人ともいえる種族のようです。

アルメの男性

ただし、アルメには最初から女性しかいなかったわけではなく、
遠い昔には男性が存在したようです。
実は本作の主人公・翔太はその男性アルメの遺伝子を持っており、
アルメ政府がそれを使って男性復活を目論んでいることが
ストーリー後半で明かされます(実はアルメの関心の対象は建造ではなく最初から翔太)。

しかし、アルメの科学者・ラザエルは、
男性を復活させてしまったらせっかくの百合世界が崩壊してしまう、
それでは困るとばかりに政府に反旗を翻します。
「女性の世界こそ至高なんだよ!」
「私は地球人の女の子が大好き…美しくて儚くて…大好き!」
などとかなり素敵な台詞も飛び出します。
アルメがこのまま地球人の女性と交配し続けた結果、
アルメの血が薄れて滅びたとしても構わないとすら言ってのけます。

というわけで百合好きとしては断然このラザエルを応援したいところですが、
この作品は翔太の視点で描かれているので、
彼と敵対するラザエルは悪役として描かれています。
最後も翔太がラザエルの考えを否定して終わっていますし、
必ずしも作品全体が百合全肯定というわけではないのが残念です。
翔太と建造の、
男女とか女同士とかを超越した普遍的な愛を描きたかったということでしょうか。

なお、アルメが男性の復活に成功したのかは、
本作の中では結局明らかにされていません。
ただ、本作の未来のストーリーであるメディアワークス版コミックでは
アルメは相変わらず女性だけなので、
男性は復活しなかったということなのでしょうか。

天使の悪戯

コミックの巻末には、
短編「天使の悪戯」が収録されています(1巻に1話ずつなので全2話)。
アルメが登場するなど、
一応「天使の僕ら」本編とほぼ同じ世界観にもとづいていますが、
独立した一話完結のエピソードと考えて問題ありません。
どちらも地球人の女の子2人とアルメ1人による三角関係のようなストーリーで、
「天使の僕ら」本編のような倒錯的なネタも無いですし、
百合姫Sあたりに載っていてもおかしくない感じの
明るく読みやすいラブコメです。

 おつかれちんちーん!

この作品には謎の決め台詞が登場します。
それは「おつかれちんちーん!」。
作中でマーちゃんことマリエル提督がやたらに連呼し、
マーちゃんの部下たちも仕方なくやらされ、
なんと最終話ではラストシーンを飾っています。
コミックのカバー下にもさりげなくOTSUKARE CHIN CHINとか書かれています。

決めポーズがあり、片膝を折り曲げて腰のあたりまで上げ、
手を特撮ヒーロー風に高く構えるがポイント。

「おつかれちんちーん!」

女性にしか興味がないはずのマーちゃん達が
なぜこうも嬉々としてちんちんと連呼しているのか、
そもそも一体何がおつかれで何がちんちんなのか、すべては謎。

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