ゆりかごの乙女たち

 あらすじ

時は大正。良家の令嬢達が通う女学院では、上級生と下級生が特別な関係を結ぶ「S(エス)」が流行している。

庶民の出ながらも優秀な成績で入学した才女・環は、上級生たちから「S」の関係を申し込まれるも、興味を持てずにいた。

しかし、同じ読書の趣味を持つ雪子と出会い、友達となったことで、環の中では少しずつ何かが変わり始める。 そしていつしか2人は友情を超えた絆で結ばれるのだが・・・。

 みどころ

「S(エス)」が流行している大正時代の高等女学院を舞台に、少女達の青春を描いた物語。

当時の女学院の様子や大正時代の風俗について非常に詳細な考証がなされており、巻末に挙げられた参考文献の多さからもこだわりが伺えます。

環と雪子

物語の中心となっているのは、主人公である環と、ヒロインの雪子。

物語前半では、2人が友達になり非常に強い絆で結ばれるまでが、 大正時代の流行なども交えながら微笑ましく描かれています。 作中で環や雪子が自分達を「S」だと明確に認めることはないものの、 周囲からはすっかりそのような関係だと見られているようです。 まるで恋のようだと言われる場面も。

物語がクライマックスに向かうにつれて、環が雪子に抱いている感情が単なる友情ではないことはよりはっきりと描かれるようになります。 しかし同時に、世相を反映したやや重い展開も入るようになり、物語はよりシリアスになっていきます。 紆余曲折はあるものの、最後は現実をしっかり見据えつつも決して希望を捨てない結末となっていると思います。

絹子とよし乃

環の同級生である絹子と、絹子と「S」の関係を結んでいる下級生・よし乃。

自分達をはっきり「S」だとは言わなかった環たちとは違い、こちらの2人は自他ともに認める「S」です。 キスシーンがあるなど、同性愛的な要素が明確に描かれています。

しかし、よし乃の絹子への気持ちは絹子が思っている以上に強いものでした。それが物語後編の衝撃的な展開へとつながっており、環たちにも少なからず影響を与えることとなります。


最終更新:2014/07/13
inserted by FC2 system