少女惑星

 作品概要

「宙のまにまに」などで知られる柏原麻実さんが
百合姫で2012〜2013年に連載していたオムニバス。

春夏秋冬それぞれの季節を舞台に、
毎回主人公を変えながら様々な恋模様が描かれます。

タイトルの「少女惑星」は最終話の内容に由来するほか、
無数に存在する星たちの運命のめぐり会いという
作品全体を通したイメージにもなっています。

 各エピソードのみどころ

episode1. 花火が消えないうちに

夏海とみどりは幼馴染で、今も大の仲良し。
しかし、夏海が年相応に女の子らしくなり男子にも人気が出るにつれて、
みどりは夏海が自分から離れていってしまう不安にかられます。


同性の幼馴染との漠然とした別れの予感に怯える女の子を、
切なくも活き活きと描いていたエピソードです。
シリアスな要素こそあれ、最後は明るいハッピーエンドになっています。
夏祭りの花火をモチーフとして生かした、収録作品の中でも特に爽やかな作品です。

episode.2 白線

律花は勉強もスポーツも得意で、その上中性的な魅力で人気の女子高の王子様。
そんな律花ですが、一見地味で大人しい千晴を非常に気に入っており、
釣り合わないようにも見えるその関係は周囲からも不思議に思われていました。

実は律花は自分のうわべだけをチヤホヤされることにウンザリしており、
自分を本当の意味で「好き」になってくれる女の子を探していたのです。
千晴はそんな律花にとってまさに都合の良い存在に見えましたが、
ある時、千晴は男子からの告白を受けて・・・。


表面的にはいかにもな王子様キャラな女の子が主人公ですが、
後半に向かうにつれ孤独な内面が描かれてシリアスになっていきます。
「王子様」な女の子をギャグでも男の代わりでもなく、
あくまで1人の女の子として掘り下げている稀有な作品です。

最後は決してハッピーエンドとは言えない内容で、
自業自得とはいえ収録作品の中でも切ない結末になっています。

episode.3 火の女王様と嘆きの下女

病弱で大人しい性格のちかは、
幼馴染の公子の後ろにいつもくっついています。
陰で「女王様」と呼ばれているほど高圧的な性格の公子でしたが、
ちかといる時だけは少しだけ優しいような気も・・・?


episode1.で悪役・・・とまでは言わないまでも
みどり達に悪意のある態度を取っていた高津公子。
このエピソードでは、幼馴染であるちかの視点から、
公子の孤独な内面が掘り下げられています。

公子が他人の幸せを憎む根底には自らの孤独があり、
後半それをちかに吐露するシーンが印象的。

episode.4 少女惑星

天性の明るさとアクティブさを持つ女の子・木蓮は、
同じ映像写真部の由美浜先輩が大好き。
下級生からは高嶺の花的存在であった由美浜先輩でしたが、
人懐っこい木蓮には心を開いて可愛がってくれています。

しかし、木蓮は由美浜先輩が土井部長とキスしているところを目撃してしまい…。


前半の必要以上の明るさとハイテンションぶりとは裏腹な、
木蓮が真実を知ってからの切ない展開のギャップが鮮烈な作品です。

結末だけ見れば失恋ものということになるかもしれませんが、
木蓮が自分の気持ちに折り合いをつけ由美浜先輩を明るく祝福することで、
切なくも希望に溢れるエピソードになっています。

最後には恋する少女達の運命を惑星になぞらえたモノローグが入り、
4つのエピソードを1つのイメージで綺麗にまとめあげています。


最終更新:2013/3/26
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