咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A

 あらすじ

かつて阿知賀女子学院の一室で開かれていた、子供麻雀クラブ。
高鴨穏乃(たかかも しずの)、新子憧(あたらし あこ)、
松実玄(まつみ くろ)、そして原村和らは、ここで一緒にたくさんの思い出を作る。
しかし麻雀教室の終了や和の転校によって、
いつしか仲間達も少しずつ疎遠になっていった。

そんなある日、和が麻雀の中学生王者として活躍をしていることを知った穏乃は
かつての情熱を思い出し、自分も麻雀で全国を目指すことを決意する。
阿知賀の高等部に進学し、再び集った仲間達とともに、
穏乃は和の待つ全国の舞台へと乗り込む。

「またみんなではしゃごう!遊ぶんだ・・・和と!」

咲 阿知賀編 300ピース いつか和と! 93-079

 みどころ

女の子だらけの麻雀漫画「咲 -Saki-」のスピンオフ作品。
主人公は本編のヒロイン・原村和の幼馴染たちで、
和との再会を目指して麻雀での全国進出を目指すことになります。

導入部にあたるコミック第1巻は、小学校時代の和との思い出から始まり、
かつての情熱を取り戻す穏乃や、再結集する仲間達の姿が丁寧に描かれています。
ここは少女達の青春ストーリーとしても非常に楽しめる出来です。

第2巻からは早くも舞台が全国大会になり、
ここから対局シーンも増えて本格的な麻雀漫画になっていきます。
「咲 -Saki-」本編と同じく各キャラクターは個性的な能力を持っており、
これを前提にした熱い駆け引きが行われます。

TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A オリジナルサウンドトラック

ちなみに「咲 -Saki-」本編と比べて展開が非常にスピーディーで、
外伝にも関わらず途中から本編の時間軸を追い抜いています。

最終的には、阿知賀が全国大会の決勝進出を決めたところで完結となりました。
以後のストーリーは「咲 -Saki-」本編へ統合され、
決勝戦の行方はそちらで描かれると思われます。


なお、作画を担当していた五十嵐あぐりさんは、
「阿知賀」完結後に「咲 -Saki-」の新たなスピンオフ「シノハユ」を執筆しています。

「咲 -Saki-」本編とのクロスオーバー

阿知賀編だけでも楽しめる内容ですが「咲 -Saki-」本編とのリンクも多く、
キャラクターの相互出演も行われています。
本編の主人公である咲が強大な存在として描かれ、
穏乃達にとって脅威となることを予感させるなど、
視点の違いを上手く活かした描写がされています。

単なるファンサービスにとどまらない重要な交錯劇もあり、
「咲 -Saki-」本編では長らく謎の存在であった咲の姉・照が
本編に先駆けて麻雀シーンに登場。
準決勝における阿知賀の対戦相手として立ち塞がり、
その圧倒的すぎる力の前に、場は阿鼻叫喚の絶望に支配されます。

 百合ポイント

「咲 -Saki-」本編以上に女の子だらけな世界観となっており、
男はまったくと言っていいほど登場しません。
主要キャラのほとんどに何らかの形で女の子同士の絆が描かれているため、
勝負の行方だけではなくそちらにも注目です。

阿知賀女子学院

高鴨 穏乃
TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.1 YES!!READY to PLAY

穏乃は「阿知賀編」の主人公で、
子ども麻雀クラブの仲間のうち、転校前の和と唯一最後まで付き合いのあった親友。
和が麻雀で全国レベルの活躍をしていると知り、
また一緒に「遊ぶ」ため自分も麻雀で全国を目指します。

穏乃の和との再会にかける情熱が「阿知賀編」の原動力なので、
ストーリーの中心人物であるはずなのですが、
大将ということもあってかストーリー前半はやや出番が控えめです。
目立った活躍は終盤に集中しています。

また、和を追いかけて全国大会に来たわりには
それほど和のことを気にしている描写がないのが気になるところだったり…。


新子 憧
TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.2 Live A-Life

穏乃と同じく、小学生時代の和の親友。
穏乃や和とは別の中学に進んだため一時やや疎遠になってしまいますが、
穏乃の情熱に呼応しすぐさま駆けつけるなど、友情は健在です。
穏乃と同じ阿知賀に入るために、すでに決めていた志望高校を変えたほどです。
この関係で、中学時代の同級生達との確執と和解がクローズアップされることも。

幼い外見だった小学生編と比べ本編でぐっとクールで大人っぽくなりましたが、
ここぞというところで熱い情熱をのぞかせます。
第1話の締めであり、本作を象徴する台詞である
「またみんなではしゃごう!遊ぶんだ、和と!」は憧の台詞。

準決勝大将戦の間、
穏乃愛用のジャージを来て穏乃の試合を見守っているのがちょっと良い感じ。
最終回のアニメ版(第16話)は、憧と穏乃が手をつないで駆け出すという
2人の友情を強く感じさせるシーンで締められていました。


松実 玄
TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.3

穏乃や和の1つ年上の上級生で、こちらも子供麻雀クラブの仲間。
一足先に阿知賀の高等部に進学しており、
子供麻雀クラブの終了以後は使われなくなっていた部屋を、
いつかみんなが帰ってくると信じて1人で守り抜いていました。
友達がいないのかもしれません仲間を信じるまっすぐな性格が伺えるエピソードです。

先鋒ということで早い段階で活躍シーンがあるため、
色々な意味で印象に残りやすいキャラです。
他の阿知賀メンバーが固有能力の詳細を出し惜しみされている中、
第1話から能力のほぼ全容をネタバラしされていました。
ドラが集まる能力を持っているため、通称「阿知賀のドラゴンロード」。

TVアニメ版は尺の都合で準決勝の先鋒戦がクライマックスになっているため、
先鋒である玄がまるで阿知賀の主役です。
何もできずに照に一方的に蹂躙されていただだけなのは内緒。


松実 宥
TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.4

玄の姉の3年生。
極度の寒がりのため夏でも厚着をしており、そのためにいじめられたことも。
幼い頃から玄に守ってもらっていて、
普段はあまりお姉ちゃんらしい威厳がありません。
しかしいつか今度は自分が玄を守ってあげたいという気持ちを持っており、
いざという時には一歩も引かない覚悟を見せます。
泣きながら試合から帰ってきた玄を抱きしめ慰めるシーンなどがみどころ。


鷺森 灼
TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.5

玄に誘われて麻雀部5人目のメンバーとなった女の子。
現・麻雀部顧問にして元・阿知賀のエースであった春絵先生に強い憧れを抱いており、
小学生の頃に現役時代の春絵からもらったタイを今でも大切にしています。

和とはほとんどつながりがなく、入部の動機も春絵絡みであるなど、
他のメンバーとはやや一線を画する位置にいるキャラクターです。
過去の敗北に引きずられ麻雀に対して煮え切らない態度を取る現在の春絵を
内心もどかしく思っているようです。

かつての春絵が越えられなかった準決勝は、灼にとっても特別な意味を持ちます。
春絵のタイを身に着け準決勝の副将戦に臨む灼の姿は非常に盛り上がる場面です。

真の主役? 千里山女子

あっさり県大会を勝ち抜き全国にやってきた阿知賀にとって、
最初の壁として立ちふさがるのが千里山女子高校です。
大会の前にも少し会って仲良くなっているなど、
阿知賀とは何かと縁のある存在として描かれています。

TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.6 TVアニメ 咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A キャラクターソング vol.7

注目は、主力選手である先鋒の怜(とき)と竜華。
怜は非常に病弱という設定で、親友の竜華はいつも怜の面倒を見ています。
竜華は倒れそうになった怜を抱いて受け止めたり、
対局中以外のシーンの大半で怜に膝枕していたりと、
正直イチャついるだけにしか見えない場面もしょっちゅうです。
しかもこの膝枕、単なるイチャイチャではなく
シナリオ上も重要な意味を持っていることが後に判明します。

阿知賀メンバーの過去話が序盤でだいたい済んでしまっている中、
怜は全国大会でも回想やモノローグがたびたび入り、
完全に主役を食っている状態です。特に以下のTVアニメ版は要注目。

伏兵?新道寺女子

準決勝での対戦相手の一校・新道寺女子高校。
照のいる白糸台、怜たちのいる千里山と比べると当初活躍に恵まれませでしたが、
注目は副将の白水哩(しろうず まいる)と大将の鶴田姫子。

この2人は非常に強い絆で結ばれており、
それを反映してかなんと対局の内容までリンクしています。
副将戦で哩が上がったのと同じ局で大将戦の姫子が必ず倍の飜数であがるという、
「リザベーション」という能力が特徴。
哩の活躍に姫子がビクンビクンと悩ましげな反応をするなど、
感覚まで繋がっているのではないかとすら思えるリンクぶりです。

ただ、この2人の関係の詳細は最後まではっきりとは語られません。
ちょくちょくイメージ映像的に回想シーンが入り、
2人でたくさんの思い出を積み重ねていることはわかるのですが、
説明が少ないため読者(視聴者)の想像に委ねられている感じ。

 アニメ版

コミック第1巻の発売が2012年3月だったのですが、
なんと翌月の4月からアニメ版の放送が始まりました。

あっさり全国出場を決めた漫画版を補完するのかと思いきや、
漫画同様のスピーディーな展開で第3話には全国出場を決め、
漫画単行本の進行度をあっさりと追い抜いています。
最終的には雑誌連載分まで追い抜き、
同じく原作を追い抜いた「咲-saki-」本編のアニメ版を彷彿とさせる状態となりました。

阿知賀メンバー間の人間関係が原作同様に描かれるほか、
漫画では見せ場のなかったストーリー前半の対戦相手たちにスポットを当て、
彼女達の友情や背景事情を補完している部分も見受けられます。


TVアニメ版は全12話でいったん完結しましたが、
2012年末からは続きのストーリーが「スペシャルエピソード」として
一部アニメ専門チャンネルや動画サイトで公開されました。
最終的にはTVアニメ版から通算して16話目にて
漫画版と同様に準決勝決着をもっての完結となっています。

千里山編 episode of side-S

TVアニメ版で一番の注目は千里山女子、特に怜と竜華です。
阿知賀メンバーは人間関係が序盤でひととおり描かれてしまい、
それ以上の掘り下げも和との再会前ということで出し惜しみ(?)されている関係上、
後半に向かうにつれ描写の比重が明らかに千里山女子に寄って行きます。

アニメ版は1クールしかないためか
準決勝の先鋒戦というやや中途半端な所がクライマックスとなっているのですが、
千里山の先鋒は体の弱い怜です。

そんな怜が何度も倒れそうになりながら、
ここまで自分を支えてくれた仲間達の気持ちに応えるべく頑張る姿が
回想やモノローグをふんだんに使ってじっくり描かれており、
これが終盤一番の盛り上がりどころ。
特に竜華との友情は必見で、普段は落ち着いている竜華が
衰弱していく怜を見かねて泣き出してしまうシーンなどは強く印象に残ります。
これらとほぼ同様のシーンは漫画版にもあるのですが、
アニメ版のほうが最終回ということもあって演出に力が入っており一見の価値ありです。

ラストシーンは申し訳程度に阿知賀一行のシーンで締められていますが、
最高潮はその少し前の、すべてをやり遂げた後に倒れてしまった怜が
仲間達に見送られるシーンではないでしょうか。
もはや完全に主人公です。

ドラゴンロード爆誕、そして爆散

全国大会の初戦で「阿知賀のドラゴンロード」と評される華々しいデビューを飾った、
阿知賀の先鋒・松実玄。
しかし2回戦では怜に何もできずに大敗し、
アニメ終盤の山場である準決勝ではさらなる受難に見舞われます。

準決勝では圧倒的強さを持つ照が事実上のラスボスであり、
怜を始めとする他校のメンバーが一致団結して照に対抗する流れになっているのですが、
玄はそれにすらついていけず、ただ怯えているだけです。
照にズタズタにされ虚ろな表情で泣いている情けない姿を延々と描かれます。
このへんになるともはや台詞すら滅多にありません。

怜と違ってこれといった感動的エピソードも持っておらず、
麻雀の実力も明らかに劣っているため、非常に影が薄くなっています。

一応、怜たちのサポートあってこそとはいえ
最後の最後に照の連荘を止めるという重要な役を負っているのですが・・・。

咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A 五 [Blu-ray]

TVアニメ版 各話あらすじ&感想

スペシャルエピソード 各話あらすじ&感想

 ゲーム版

2013年8月にはPSP用ゲーム
「咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A Portable」が発売されています。

咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A Portable 通常版 クリアしおり5枚セット 付 咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A Portable(限定版:描き下ろしジャケット&新規オープニング曲CD&設定原画集 同梱) クリアしおり5枚セット 付

「阿知賀編」のキャラはもちろん、「咲-Saki-」本編からも人気キャラが多数参戦。
各キャラには原作を忠実に再現した能力が搭載されているため、
原作さながらの駆け引きが楽しめます。

「咲-Saki-」本編のゲームと違い原作ストーリー再現モードはありませんが、
「チャレンジ」モードの報酬としてイラスト付きのショートストーリーが鑑賞できます。
麻雀ゲームとしてはもちろん、キャラクターゲームとしてもやりごたえのある作品です。


最終更新:2013/08/31
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