くちびるに透けたオレンジ

 あらすじ

千鶴は、転入生の叶(かなえ)に一目で心を奪われた。

クラスでも地味な存在だった千鶴のグループになぜか入ってきて、
千鶴たちと一緒に行動することが多くなる叶。
しかし、千鶴は叶を見つめるばかりで上手く話をすることができない。

千鶴は、満たされない気持ちを埋めるかのように、
密かに叶とおそろいの物を買い集めるようになり、想像の世界に浸っていく。

 百合ポイント

ちょっと地味で内気な女の子の、
自分とは一見対照的な、綺麗で明るい女の子への憧れと恋を描いた作品。

千鶴の内気さはかなりのもので、
いつも一緒のグループにいるのに叶になかなか話しかけられなかったり、
読者から見るとかなりもどかしい性格をしています。

その一方で、千鶴はこっそり叶と同じ小物を集めており、
特にオレンジのリップは作品のタイトルの元にもなっていて、
ストーリー上でも印象的な使われ方をしています。
また、かつらで叶と同じ髪型を作って
叶を想像しながら自分を慰めるというちょっと危ないシーンも登場します。
人に見られていないところではだんだん大胆になっていくタイプのようです。

このように千鶴の叶を求める気持ちが
叶に伝えられないまま心の中でどんどん大きくなっていく様子が
千鶴の行動と内面描写を織り交ぜて上手く描かれている作品です。

一方の叶のほうも、実は(というか予想通り?)
はじめから千鶴のことが気になっていたようです。
ただ、叶の気持ちは終盤で2人が結ばれるシーンまでハッキリしない部分が大きく、
個人的には叶側の心理描写ももっと見てみたかった気もします。

その他の収録作

巻末には、「閉じててね、心」「これが恋なのかわからない」
という2つの短編が収録されています。
こちらは百合姫Wildroseに収録されていたもので、
「くちびるに透けたオレンジ」(ちなにみこちらは携帯コミックが初出でした)と同じく
ちょっとエッチなシーンも登場します。

ニ作とも、主人公の内面描写重視である点や、
なかなかお互いの気持ちを伝えあえずにすれ違いつつも
最後には結ばれるという点で「くちびるに透けたオレンジ」と
似た作風といえるかもしれません。


最終更新:2010/07/28
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