百合男子

 作品概要

男子でありながら百合が大好きな高校生、花寺啓介。
百合姫を百合姉妹時代から愛読し、あらゆる百合作品に精通する彼にとっては、
現実の女の子達をネタにした百合妄想などは容易いことである。

そんな啓介が最近気になるのは、クラスメイトの藤ヶ谷沙織と宮鳥茜。
ただの友達にしては仲の良すぎる2人のイチャつきぶりに、
啓介の百合フィルターはかつてないほど絶賛稼動中だ。

しかしここで彼は、避けられない現実にぶつかることになる。
いくら女の子どうしの百合が素晴らしかろうが、
横からそれに萌えている男にすぎない自分は、不要な存在ではないだろうか?

我思う、故に百合あり。だが、そこに我、必要なし・・・。

 みどころ

百合漫画専門誌「百合姫」で連載されており
一応百合をテーマにしてはいるものの、男が主人公という異色の作品。
ストーリーの中心も百合そのものではなく、百合に萌える男…すなわち百合男子。
連載開始当初から賛否両論で、百合姫読者の間にカオスを生んでいます。

我思う、故に百合あり

メインとなるのは主人公・啓介に代表される百合男子達の生態描写です。
啓介の百合に関する思索や妄想がみどころで、
毎回あらゆる出来事を百合方面に偏った価値観で解釈しては
妙に大げさで理屈っぽい、そして長ったらしいモノローグを並べ立てます。

全体的に非常に自虐的なノリで、 百合が好きな男子はマイノリティであり、
隠すべき恥ずかしい趣味かのように描かれています。
啓介の百合妄想もたいていは的外れで、
空回りしてひどい目にあうオチがつくのがお約束です。

さらに2巻あたりからは、
「百合が好きな男は現実で女と恋愛をしてはいけないのか」
という答えが出そうにない難題に首を突っ込み始めます。
果たして、啓介は納得のいく答えを見つけることができるのでしょうか?

魁!百合男子連盟

啓介の他にも百合男子が登場することがあり、
彼らは「百合男子連盟」と呼ばれています。

一応仲間のはずですが、純愛ものが好きな人、少女漫画チックなのが好きな人、
ライトなのが好きな人、18禁作品が好きな人・・・と好みのジャンルはバラバラ。
すぐに趣味嗜好で対立して口論になり、挙句は殴り合いの喧嘩を始めます。
非常にやかましく男臭い集団ですが、
全員わりと美形に描かれているのが作者のせめてもの良心・・・?

リアル百合百合詐欺じゃないか・・・!?

このように基本的に男が中心の作品ではあるのですが、
一応ちゃんと女の子どうしの恋愛(かもしれない)要素も登場します。

特に沙織と茜は、啓介が目をつけただけあって
当初からただの友達とは思えないほどの仲の良さ見せつけています。
しかしこの2人が本当にそういう関係かは意図的にぼかされており、
本当にガチ百合のような、そうでもないような描写が交互にされています。

それを毎回間近で見ている啓介も、勝手にガチ百合と確信して喜んだり、
かと思えば勝手に失望して「リアル百合百合詐欺じゃないか!」と憤慨したりと、
判断に困っている模様。

そんなもったいつけた感じの沙織と茜でしたが、
コミック第4巻ではついに2人の具体的な関係性がある程度ながら描写されました。
この巻には中学時代の2人をメインにした描きおろしもあり、
こちらは「純正百合漫画(作者談)」なので一見の価値あり。


さらに、クラスメイトの松岡さんという女の子も
沙織に何かしら思うところがある様子。
単なる友情のようにも、それ以上にも見えるのですが、
こちらも意図的にぼかされており真意が気になるところです。

百合女子誕生

全体的に男臭いこの漫画ですが、コミック第4巻からは意外な新展開が。
啓介の百合漫画を偶然読んだ沙織がなんと「百合女子」に覚醒します。

沙織は女性視点・初心者視点というこれまでなかったスタンスなので、
少々マニアックすぎた百合男子達とは一味違った新鮮な印象を読者に与えてくれます。

百合男子 (4)巻 限定版 (IDコミックス 百合姫コミックス)

ただ、これで啓介の影が薄くなるかというとそんなことはなく、
「百合女子から見ても百合男子は面倒くさい」という感じで
相変わらずの無駄な存在感を放っています。

 実名百合談義

実在の百合作品が実名で言及されるのも「百合男子」の大きな特徴です。
時にはその作品の絵柄を忠実に再現したイラストが入ることも。
著作権表記があるところを見るといちいち権利元の許可を取っているようです。

作品によってはかなり痛烈な批判…というよりただの悪口を書かれていることもあり、
あくまで作中の百合男子の1人の個人的見解とはいえ、
好きな人は注意が必要かもしれません。

「コミック百合姫」
啓介が大好きな百合漫画雑誌。
百合男子が掲載されている雑誌ということで、基本絶賛されます。
ちなみにコミック1巻の表紙で啓介が持っているのは百合姫の2011年11月号。

「ゆるゆり」
啓介のお気に入りの作品。
百合姫掲載のためかかなり頻繁に言及がされ、やはり大絶賛されています。

「ささめきこと」
おそらく百合姫関連以外で最初に引用された作品。
啓介いわく「ウルトラマンのお面を見るたび涙が止まりません」。

「乙女はお姉さまに恋してる」 「かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜」
百合と見せかけて女装・性転換ものであったため、
当時の百合好きから地雷として叩かれたというエピソードが紹介されています。

「青い花」
百合男子連盟の一員・鎌倉の好きな百合漫画。

「マリア様がみてる」
百合男子連盟の一員・武蔵野の好きな百合作品。

「けいおん!」
百合男子連盟の一員・桜ヶ丘の好きな百合漫画。
・・・が、武蔵野からは「百合だなんて認めない」とバッサリ。

「少女セクト」
百合男子連盟の一員・籠目の好きな百合漫画。

「オクターヴ」
男性とセックスする描写があるためか、
「メガトン級の地雷」「あんなもん百合じゃねえ」よばわり。

「花物語」
女の子どうしの恋愛が「エス」と呼ばれていた時代の「百合界の金字塔」として紹介。

「魔法騎士レイアース」「NOIR」「屋上の百合霊さん」
啓介の師匠秘蔵の百合コレクションにあった作品たち。
アイテム数から察するにレイアースがお気に入りのようですが、
師匠の若いころはちょっと女の子キャラが多いという程度のこのくらいの作品で
妄想するしかなかった・・・という時代を感じる趣味です。

「それでもやっぱりリンケージ」
元百合男子の不良・風華が好きだった作品。
かつて一部に熱心なファンがいたものの、最後は打ち切られたそうな。
架空の漫画ですが、元ネタは、「百合男子」の作者である倉田嘘さんの
過去作品「それでもやっぱり恋をする。」「リンケージ」のタイトルを混ぜたもの。

「ゆりゆり」
沙織が啓介の持ち物から偶然発見し、百合にハマるきっかけになった作品。
なもりさんの百合同人誌をコミック化したもの。

「ストロベリー・パニック」 「ストライクウィッチーズ」 「犬神さんと猫山さん」
啓介が茜への布教用として沙織に勧めた、
「明るく楽しくキャッキャウフフ!」な作品たち。

「青い花」 「純水アドレッセンス」 「彼女とカメラと彼女の季節」
啓介が松岡さんへの布教用として沙織に勧めた、
「ドラマとしても十二分に楽しめる本格ストーリー系」な作品たち。
さっきから有名作品・定番作品に混じって
さりげなく百合姫のマイナー作品を入れているあたりに大人の事情を感じます。

 百合名場面名鑑

啓介が百合的においしいシチュエーションに遭遇するたび、
心の中で書きためている「百合名場面名鑑」。
百合好きなら漫画やアニメで一度は見たことがある定番シーンを集めた脳内図鑑です。

コミック1巻・2巻の店舗特典ペーパーの元ネタにもなっています。
こちらは店舗によって内容が違うというこだわりようでした。
後に4巻限定版の特典として一冊の小冊子にまとめられています。

以下では、作中に登場した「百合名場面名鑑」の一部を、
思いつく限りで実在作品と結びつけながら紹介します。

「他の子と遊ばないで」
茜は沙織にたくさん友達がいるのが気に入らない・・・という啓介の妄想。。
「ブルーフレンド」あたりが典型的。

「2人だけの秘密の場所」
茜が昼食時に沙織を人気のないところに連れ出したので。
「神無月の巫女 」とかにあったような。

「あなたに触れた指先がいとおしい」
松岡さんが自分の指先を気にしていたのを見て、啓介が妄想を膨らませて。
「咲 -Saki- 」のアニメ版にそんなのがあったような…。

「パーティーを2人で抜け出して」
文化祭ででこっそり人気の無いところへ行く少女2人を見て妄想。
意外なところだと「ジャスティス学園」とかにあります。

「これってもしかしてデートだよね」
2人で映画を見に出かけた沙織と茜をネタに。
百合もの以外でも普通に見る気がする微妙なライン。

「とっさに私の手を取って」
啓介から逃げるため、沙織の手をとっさに取った松岡さん。
自分から逃げられてるにも関わらず、それを見て喜ぶ啓介って一体・・・。
作中で実名が出てるとおり「ゆるゆり」にあります。

「あなたがいれば他に何もいらない」
茜の沙織への独占欲を拡大解釈して。
これもいろんな作品で見る気がします。

・・・こうしてまとめてみると、
べつに百合に限らず恋愛もの全般でよく見る場面が多い気も・・・?

 ドラマCD

こんな作品ですが、どういうわけかドラマCDや、
さらにはキャラクターソングCDが製作されています。

コミック2巻限定版付属ドラマCD

まずコミック第2巻の限定版には、
沙織、茜、松岡さんの3人をメインにしたドラマCD「夕暮れ、三人。二人きり。が付属。
こちらは「百合男子」のドラマCDなのに男子はまったく出てきません。
ただ、本人は出ないとはいえ啓介の噂をしている場面が何度かあり、
啓介がハタから見てもかなりの変人であることがわかります。

百合的には、前半の茜と沙織のイチャイチャと、
後半の松岡さんの沙織への友情(またはそれ以上?)描写が聞きどころです。
3人ともこの時点の原作では本当に百合かどうかまだ不明なはずなのですが、
このドラマCDに限っては正直百合にしか聞こえない描写をされています。

百合男子 2巻 限定版 (百合姫コミックス)

ドラマCD&キャラクターソングCD

また、2012年8月にはドラマCDとキャラソンCDの発売。
こちらは普通に啓介が登場し、 他のキャストも男性声優だらけ(しかもやたら豪華)。

花寺啓介:福山潤
籠目正二郎:桜井孝宏
鎌倉豊:置鮎龍太郎
桜ヶ丘健司:安元洋貴
武蔵野弘之:岡本信彦

藤ヶ谷沙織:佐倉綾音
宮鳥茜:戸末遥
松岡涼:茅野愛衣

百合男子ドラマCD 百合男子キャラクターソングCD


最終更新:2013/7/26
inserted by FC2 system