アナと雪の女王

 あらすじ

アレンデール王国の王女・エルサには、雪や氷を操る魔法の力があった。
しかし幼い頃に誤って妹のアナを傷つけてしまって以来、エルサはその力を隠すようになる。

やがて成人したエルサは女王として即位する。
しかし、戴冠式の日に再び魔法が暴走。エルサは氷の魔法の秘密を人々に知られてしまう。
エルサは王国を雪と氷で閉ざし、雪山への中へと逃げるように姿を消した。

アナは、凍りついた王国を元に戻すため、そしてエルサを救うため、雪山へと足を踏み入れる。

作品概要

アンデルセンの童話「雪の女王」を原案としたCGアニメーション映画。
アメリカ公開時の原題は「Frozen」でした。

ストーリーの中心となるアナとエルサの姉妹に加え、イケメン王子のハンス、お人よしの青年・クリストフ、夏に憧れる雪だるまのオラフなど、個性的な登場人物たちが物語を彩ります。

エルサが王国を捨てて旅立つシーンで歌う挿入歌(エンディングテーマでもある)「Let It Go」も話題を呼びました。

百合ポイント

物語後半、アナの心臓が魔法で凍り付いてしまいます。
氷を解くために必要とされるのが、「真実の愛(言語ではan act of true love:真実の愛による行動)」。

「真実の愛」が具体的に何のことなのかは当初明らかでないものの、
ディズニー映画のお約束とばかりに王子様のキスが候補にあがります。
ですが、実はこの王子は悪人であり「真実の愛」の持ち主ではありませんでした。

次に候補にあがるのが、道中でアナをたびたび助けてくれた好青年・クリストフ。
こちらは王子と違い根っからの善人で、ヒーロー役としても申し分ないように思えます。

しかし、クライマックスでアナを「真実の愛」で救ったのはエルサでした。
氷の塊となってしまったアナをエルサが抱きしめた時、氷は解け、アナは元に戻ります。
より正確には、アナがエルサの危機を救うために自分を犠牲にしようとしたことが
「真実の愛(言語ではan act of true love:真実の愛による行動)」だったのかもしれません。
アナとエルサは強く抱きしめ合い、アナは一言「I love you」と伝えます。


「ヒロインを救うのは王子様(ヒーロー)のキス」というのはおとぎ話のお約束ですが、
この映画はそれを意識的に破っている意欲的なストーリーとなっています。
男性陣は偽善者の王子様と善人のクリストフという二段構えとなっているのですが、
実はその両方がフェイクというのはかなり挑戦的ではないでしょうか。


なお言語である英語版と日本語版は若干脚本が変わっており、
日本語版は全体的にマイルドな表現になっています。
クライマックスの「I love you」も日本語版ではぼかされており、
「大切な人だから」(吹き替え版)、「愛しい姉だもの」(字幕版)といった感じ。

英語の「I LOVE YOU」(愛してる)は本来かなり広い意味があり、
恋愛感情が含まれる場合も、そうでない場合もあります。
家族に対する愛という意味で言うことも珍しくない表現です。
そのあたりの解釈は視聴者に任せ、できれば言語に忠実に訳してほしかったように思います。
一応、ノベライズ版の一部には言語通り「愛しているわ」と訳しているものがあります。

実はこの映画はアメリカでは日本より数か月早く公開されているのですが、
その際に「同性愛的である」としてかなり議論を呼んでいたようです。
遅れて公開された日本語版が「あくまで健全な姉妹の絆です」と言わんばかりの予防線を張りまくった翻訳になっているのは、そのような評判を気にしたものだったのかもしれません。

オリジナル版に込められたメッセージを知るためには、
もし可能であれば英語版を視聴することをおすすめします。
幸い、ディズニー映画らしく英語はかなり聞き取りやすく、語彙も簡単です。


最終更新:2014/12/21

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